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K-T境界

 古生代と中生代は、超大陸の出現による生物大絶滅というインパクトで区切られ、これをP-T境界と読んでいますが、中生代の終焉も恐竜をはじめとする大型竜族のドラマチックな絶滅劇で幕となりました。今から約6500万年前の中生代と新生代の境界は、白亜紀(Kreide:ドイツ語)と新生代第3紀(Tertiary)の頭文字をとってK-T境界と呼ばれています。第3紀という時代区分は古生代を第1紀、中生代を第2紀、新生代前中期を第3紀、現代を含む新生代末期を第4紀と呼ぶものです。
 K-T境界を決する破局は、ユカタン半島付近に衝突した巨大隕石によるものであるという説が今では有力ですが、壮絶なインパクトが大型爬虫類とアンモナイト(海洋軟体動物)の仲間を選択的に滅ぼしたのはどうした理由によるのでしょう? 哺乳類や原始的な爬虫類、鳥類はなぜ破局をまぬがれたのでしょう。
 進化的な爬虫類だけが隕石衝突に対する耐性がなかったのでしょうか。では、海洋動物のアンモナイトはどうだったのでしょう。
 巨大隕石の衝突がもたらす破壊は確かに壮絶ですが、特定の生き物を選択的に滅ぼす理由としては弱い気がします。環境の激変は進化的な大型動物ほど不利で、それに該当するが恐竜や大型爬虫類たちであったというのはとりあえず理にかなってはいますが、恐竜にも小型種はいましたし、それに比べるとK-T境界を越えて生きながらえたワニの仲間の方がずっと大型です。

 選択的絶滅には、環境を永続的に変える何か他の理由があったはずです。その理由として支持したいのが、隕石衝突説よりも古くから提唱されている火山活動の終息説です。超大陸が分裂を開始した中生代、地球上では火山活動が活発になり、火山噴火がもたらした炭酸ガスによって中生代の空気中の二酸化炭素量は現在の10倍以上、その温室効果に伴い平均気温も10〜15℃も高かったといわれています。
 激しい火山活動が終息し寒冷化が進むと、高温な環境に適応して進化した恐竜をはじめとする大型爬虫類は、一斉に衰退し始めたわけです。極地方では氷床の発達が起こり、海面が下がって海岸線が陸地から遠のいて行く海退現象が進み、大陸棚が露出し、そこに住んでいた多くの海洋生物の生命を奪いました。アンモナイトの絶滅は彼らが当時の大陸棚に最も適応し繁栄していた動物であったことを示しています。
 恐竜や翼竜、長頚竜たちは中生代の温暖な気候に最もよく適応し、形質の特殊化を進めた動物たちです。彼らがひじょうに高等な動物として暮らせたのは、彼らの熱的慣性による恒温性が温暖な気候によって保証されていたからで、火山活動が終息し、空気が澄んで放射冷却が進み始めた中生代末期、彼らは滅びへと向かうしかかなったのです。

 恐竜の仲間はK-T境界を越えることなくすべて絶滅しましたが、彼らの落とし子である鳥類は、自ら発熱して恒温性を維持する術を得て生きながらえ、新生代になると進化的爬虫類の去ったあとの空席を埋めるべく一気に進化放散を開始します。
 鳥類は恐竜の直接の子孫であり、骨格の構造や脚の仕組みに恐竜の特徴をよく残しています。彼らを恐竜の生き残りと主張する学者先生もいるようです。つまり、恐竜は鳥類に形を変えて今も繁栄していると。鳥類を恐竜の仲間と定義するかどうかは別として、恐竜の研究に鳥類の観察は有益かもしれませんね。同じ爬虫類ということでヘビやトカゲとの比較にばかりこだわっているより的確に恐竜の生態にアプローチできるかもしれません。進化系統的にもヘビやトカゲよりも鳥類の方が恐竜に近縁ですし。

 新生代第3紀、それは約6500万年に終わった中生代に比べると短い地質時代ですが、世界規模で氷河が発達する氷河期といわれる時代と、気温が上昇して氷河が溶け海進現象が進行する間氷期といわれる時代が何度も繰り返し訪れる、目まぐるく気候の変化する時代となりました。ただ、比較的高温の間氷期であっても、中生代の高温に及ぶことはなかったので、中生代に比べると全体的に寒冷な時代と言えるでしょう。
 この寒冷な時代に恒温性を維持し、高等動物としてやってゆくには、内燃機関によって自ら発熱するシステムを身につけるしかありませんでした。その機能を備えた鳥類、そして哺乳類が覇者として新生代という時代を担うことになり、爬虫類は支配的な地位を彼らに明け渡して小型多様化を迎えたわけです。

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