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真獣類の進化放散

 哺乳類は、原獣類、後獣類、真獣類の3つに大別されます。原獣類は卵生の動物で、中生代にほぼ絶滅し今では単孔類(カモノハシ、ハリモグラ)を残すのみです。後獣類は胎生に進化しているものの、胎盤を持たないか極めて未発達で、その中の主流である有袋類は、メスの腹部にある育児嚢で子供を自立できるようになるまで育てます。最初の胎生哺乳類にして多数の大型動物を進化させた有袋類は、かつて世界中に分布していましたが、真獣類との競合に破れて今ではオセアニア及び南米に、他の大陸と隔絶された状態で暮らしています。そして胎盤を有し子宮の中で子供を充分に育ててから出産するという高度な胎生を確立した真獣類は、世界中のあらゆる環境に進化放散し、他の2つのグループが成し得なかった、完全な水棲生活への適応や、飛行生活者の分化に成功しています。

 後獣類は、新生代前期にじつによく繁栄し、大型肉食獣や草食獣、小型のさまざまな動物といったあらゆるタイプの陸棲動物を世界中に送り込みました。後獣類と真獣類は、共に中生代に原獣類から分化しましたが、中生代白亜紀末のK-T境界の生物大絶滅で恐竜や大型爬虫類と共にその多くが絶滅しました。新生代初頭に生き残った陸棲動物は、小型の両生類と爬虫類、鳥類、そして後獣類のうちの有袋類と真獣類でした。
 有袋類が世界を征するための最初の敵は鳥類でした。中生代からすでに高度に進化しており、飛行というずば抜けた移動手段を有していた鳥類は、有袋類の行く先々で彼らを迎え撃ちその繁栄を阻もうとしました。恐竜や大型爬虫類亡きあと新生代初めは鳥類の独壇場で、飛行動物のみならず巨大な地上性動物も多数輩出しました。しかしながら飛行というひじょうに特殊な技能を身につけた鳥類は、種の多様化という点でかなり非力で、有袋類にとってはつけ入る隙が充分にありました。最初は酷しい下積み生活に甘んじていた有袋類も、ところどころで戦果を上げることに成功し、いつしか鳥類の生活圏を脅かすようになっていったのです。新生代初めの鳥類の支配を短期政権に終わらせ哺乳類の時代を築いたのは、じつに有袋類の業績だったわけです。
 有袋類の度重なる快進撃に遅れをとった真獣類は、その陰に寄り添うように生活圏を拡げて行き、有袋類が進化的鳥類を撃退してくれるのを見計らったかのように勢力争いに参戦します。そして有袋類も短命でその政権を真獣類に明け渡し、目まぐるしく政権交代劇が繰り返された新生代初期以降は、真獣類の天下となりました。真獣類の時代は、新生代を通じて続くことになります。有袋類がオセアニア及び南米という地域限定で今も生き長らえているのは、大陸移動によって両大陸が真獣類の進軍以前に他の陸地から隔絶されたからです。

 真獣類が有袋類との競合にことごとく勝利した要因はその繁殖方法にありました。有袋類はひじょうに小さな子供を出産し育児嚢で保育するので、妊娠時の負担も少なくお産もひじょうに軽く済むのですが、産後の稚児の生存率が低くなりがちです。生まれた直後の稚児は虫のように小さいのですから。それに育児嚢に収容して育てる関係上、小型動物の生存率向上の鍵となる多産という点でも不利になります。
 そこへゆくと真獣類は小型種では多産が可能ですし、大型種では出産直後の稚児が自分の足で歩けるくらいまで母胎の中で安全に保育されます。動物が生存率を高めるうえで重要なことは、少しでも早く成長するという点にあります。とくに大型種の場合、幼く小さな幼児期は生きて行くうえでひじょうに危険なのです。有袋類は稚児を大きくなるまで育児嚢で育てるという点で、幼い個体を外界にさらす危険を回避してまいりましたが、あるていど自立できるまで母体の胎内で保育するという真獣類のやり方には及びませんでした。大型真獣類は自立できる稚児を出産してから授乳しますが、有袋類では虫のような小さな稚児のうちから授乳して母胎外で育てなければなりません。

 有袋類との競合に勝利してからも真獣類の進化放散は目ざましく、世界中の山野や河川、荒れ地や砂漠、極寒の極地方にまで同輩を送り込み、さらには陸から遠く離れた遠洋生活者まで輩出しました。滑空という技能を身につける者もいくつか現れ、その中には鳥類と同じように自在に飛び回れる者まで現れ、これまで陸地伝いにしか生活圏を拡大できなかった彼らが、大空を飛んで海を渡るという快挙をなし遂げたのでした。

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