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縁の下の長友

2013/08/10


 筆者がクソガキだった頃の昭和中期は、大阪のかなり都会化が進んだところでもヘビはけっこう身近な生き物で、筆者にとっては興味の的でした。あの長細い手足もない不思議な動物が、なんであんなに自由自在に俊敏に動けるのか、カエルやカメのようにやすやすと捕まえられないのか、まったく謎でした。
 筆者にとって身近なヘビといえばやはりアオダイショウで、同じように身近なヘビのはずのシマヘビは、山や林に行かないとなかなか姿を見ることができませんでした。シマヘビより大型になるアオダイショウの方が、カエルやトカゲよりもネズミを当てにして人家付近に集まる傾向があったのでしょうか。当時は人家はまさにネズミの棲息地でしたから。
 あと、よく見かけたのはマムシやヒバカリですか。両者はいずれも山間に行かないと姿を見ることができませんでした。ちょっと変わったところでは、シロマダラという小型のヘビを、これは筆者の友人宅の庭に出現したのをいただいたことがあります。その友人宅も山がちなところに建っていました。現在では人家からネズミはことごとく撤退してしまったので、アオダイショウもまた山に帰って行ってしまいました。
 人家のアオダイショウは主に縁の下に棲んでいたように思います。一方、ネズミの方は天井裏で運動会をしていて、夜など眠っているとコトコトいう彼らの足音が日常的に聞こえていました。筆者の父母は、ネコに追いかけられるネズミの足音だと言ってました。つまり当時、白黒テレビで見ていたテレビ漫画「トムとジェリー」が天井裏で繰り広げられていたわけです、父母の言を信じるならば。だとしたら筆者らが留守にしている時は、我が家のトムとジェリーは、家の中を思い思いに駆け巡っていたのでしょうか。確かに近所は野良ネコだらけで、子供たちはそれを捕まえて連れ回したりしていました。当時の野良たちは、人間の子供には気を許していて、やすやすと捕まえられたものです。
 当時は、ベビーブームと言われる時代で、近所にはたくさんの子供たちがいましたが、それでも小中学生が学校へ行っている時間などは、下町にも喧騒が遠のくいとまがありました。そんな時、人家のヘビたちは、縁の下から這い出してきて日光浴をすることがあったようです。子供たちにたまにお菓子をくれる近所のばぁちゃんが、ヘビの日光浴の目撃談を語ってくれました。実際に筆者も遊び場からものを取りに帰宅した折り、大胆にも玄関先でとぐろを巻いているアオダイショウに遭遇したことがあります。捕獲する格好のチャンスと手を伸ばすと、猛然と飛びかかって来て、筆者がひるんだすきに、縁の下に逃げ込んでしまいました。
 ヘビは日光浴しますよ。食事をしたあとなどは、体を温めた方が消化吸収力も高まるでしょうし。でも、ヘビの飼育には日光浴用の設備(バスキングライト等)は不用だとされています。筆者もヘビの飼育に照明器具は使用しません。でも、弱い紫外線を発する爬虫類用の照明くらいあれば、ケージ内の見栄えもよくなりますし、良いかも知れませんね。ただし、小さなケージだと温度が上昇しすぎてヘビが蒸し焼きになってしまうので、充分な大きさのあるケージと温度チェックはかかせません。
 でもまぁ、基本的には夜行性の動物なので、彼らにとっては縁の下の暗がりの方が、安住できる場所なのでしょうけどね。あるとき筆者は、ヘビの楽園を求めて自分の家の縁の下に潜り込みました。残念ながらヘビの楽園は見当たりませんでしたが、1頭のアオダイショウとバッタリ出くわし、人の来ない場所とタカをくくっていた彼は、すっかり油断していたらしく、筆者の手にむんずとつかまれることになったのです。「うっしゃあ!」と叫んで匍匐交代で縁の下から這い出てくるクソガキの姿を想像してください。
 今から思うとたまたまヘビの首根っこをつかんだおかげで、噛まれることもなく、代わりに腕にしっかり巻きつかれて子供の力ではそれを引き剥がすこともできませんでした。捕まえたまでは良かったけれど、その後の計画がなかったので、ヘビを収容するケージもなければ、応援もいません。ほこりまみれになりながら、腕にしっかり巻きついたヘビを見つめて途方にくれるだけでした。これほどの力で腕を締め上げる動物なんて初めてでした。捕獲は諦めてとりあえず腕の安全を確保した方が良さそうです。そう思ってヘビを握る手をゆるめたのですが、こぶしごとがんじがらめにされていて手を開くことさえままなりません。
「おぅっ、えらいことになってるな」近所で家を建てていた大工さんが近づいて来ました。
「とれへんねん」筆者は助けを求めました。
「そりゃ、あれだ。ぼんの手を餌だと思って絞め殺そうとしてるやで」
 ピンチです。テレビで見たヘビがカエルを飲むの図を、筆者の可愛らしい手で実践しようとしているのです。ヘビに手を飲まれたとあれば、またぞろ母ちゃん激怒です。なぜだかヘビに飲まれるよりも母ちゃんの大目玉の方が怖かったですね。
「とってぇ」と情けない声を出すと、大工さんは、よっしゃ、と言って、手をパンパンたたき、アオダイショウと格闘し始めました。大人の力はすごいです。あれほどガッチリと筆者の腕をホールドしていたヘビが、荷造りを解くようにほどけて行きます。
「なんでお前、ヘビにまかれとんねん」荷ほどきしながら大工に尋ねられ、捕まえて飼おうと思ったとうっかり答えると、「こんなもん飼えんわ。夜店で売ってるちっこいのにしとけ」と忠言されました。
 筆者の手を離れたアオダイショウは、筆者の身長を上回る長さでした。大工さんは、その尻尾をつかむと、棒切れで前の方を支え持ち、そのまま近くの小川に捨ててしまいました。大工さんのヘビの扱いがじつに様になっていて、かなり憧れましたね。ヘビは、ドロドロの汚い水の上をスイスイと泳いで行きました。小川といっても流れの悪い水路で、家庭の下水が流れ込み、ネズミの死骸が浮かぶひどい水域で、のちにコンクリートのフタで埋められてしまうのですけどね。その水路の閉鎖と共に、ヘビもネズミもご近所から姿を消してしまいました。

 アオダイショウに締められた腕の感触は、かなり長い間残っていてました。
 また、大工さんに教わった「夜店で売ってるちっこいの」には、けっきょく出会えないままでした。筆者の古いいい加減な記憶では、父かあるいは親戚のおじさんに、ペットとして連れ歩く小さなヘビの話しを聞いたことがあるように思うのですが、今の今まで確認できていません。むかしそういうヘビが売られていてたという情報をお持ちの方は、ぜひ教えてください。

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