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拒食と光周期

0213/08/27


 飼育動物が餌を食べてくれないというのは、飼育者にとって最も大きな悩みのひとつであり、しかもなかなか解決困難な問題だったりします。筆者も様々な動物を飼育してまいりましたが、わけても爬虫類や両生類はこの問題に悩まされることが多いように思います。他の動物の場合、飼育環境への馴化がたいへん困難な種やその動物にとって適切な餌を用意できないような場合に拒食が起こり、それら飼育難易度の高い種を避け、飼いやすい種の健康的な個体を入手できれば、積極的に採餌してくれることが多いです。ところが、爬虫類では飼育難易度が低く初心者向きと言われる種でさえ、しばしば拒食を来し、飼育者を困らせます。
 爬虫類が飼育下において拒食しやすい原因のひとつは、彼らが外温動物であるからでしょう。内温動物である哺乳類や爬虫類では、ものを食べないことは死に直結します。体内にエネルギーがないと体温を維持できないからです。しかし外温動物では、体温の維持を外気温に依存しているので、その分エネルギーの消費量が少なくて済み、哺乳類ほど多くの食料を必要としません。

 また、体温が下がると食物を充分に消化できなくなり、未消化の食物がいつまでも体内にあるとそれが腐敗して体調管理に影響します。爬虫類にとって消化不良は深刻な問題で、腹の中で食物が腐って有害な細菌が繁殖したりガスが発生したりするのを防ぐために、餌を吐き戻してしまうことがあります。トカゲはヘビのように上手く吐き戻すことが苦手で、腹の中の未消化物の腐敗によって体調を崩したり、そのまま死に至ることも少なくありません。したがって外気温が充分でないと判断した場合は、餌を食べようとしません。採餌することで身を危険にさらすことになりかねないからです。
 ショップでは積極的に採餌しておりひじょうに良好な健康状態を維持していた個体が、買って帰ったとたんに餌を食べなくなる。そんな経験をした覚えのある飼育者は少なくないでしょう。飼育温度は適切な状態を維持しているのに。ショップの人に尋ねてみると、飼育環境に馴れていないせいという答えが返ってくることが多いと思われますが、馴れないと採餌しないというのはそもそもどういうことなのでしょう。
 ショップの方に教わって適切な温度と光環境を整え、餌もそれまで食べていたものと同等なものを用意したのに食べてくれない。新しいケージは匂いがちがうからでしょうか。それもあるでしょう。しかしそれよりも飼育動物にとって気になるのは温度変化だと思います。フトアゴヒゲトカゲのような昼行性の動物を飼育するには、必ず昼夜の差異を設けてやらねばなりません。屋内で飼う場合には、照明の入り切りによって昼夜のちがいを演出し、彼らに活動時間と休眠時間を設けます。この光周期に問題があるのではないでしょうか。


↑日光浴をするフトアゴヒゲトカゲ。外温動物でも昼行性で活発に動き回る動物の多くは日光浴をする。

 一般に昼行性の生き物を飼育する場合、光周期はおおむね自然の周期に合わせます。すなわち昼間は照明をほどこし、夜間は消灯します。これを逆に行なっている方はあまりいないでしょうし、ショップの方も、夜は必ず消灯してくださいと教えてくれるはずです。
 ところが、そのショップでこれが守られていないようなケースが少なくありません。夜の10時まで営業しているショップで、昼行性の爬虫類のケージだけ真っ暗にしているところはありません。彼らは本来なら寝ている時間帯に煌々と輝く白熱球の下で活発に活動しています。その暮らしに馴れ、もりもり採餌していたトカゲが、新しい飼育者のところで昼夜の時間を大幅に変えられたら、彼らは寒冷期の到来を感じ取るかも知れません。つまり、餌を食べても気温が下がるようなことがあれば、恐怖の消化不良に見舞われることになる、それを肌で感じたトカゲは、餌を食べようとはしないでしょう。すでに充分に採餌し良好な健康状態を維持している個体にとって、食事は重要な問題ではありません。それよりも光周期の大幅な変化を無視して食べる方が不安なのです。

 筆者の経験では、とくに未成熟の個体に、拒食や長期の食欲不振が多いように思います。性差ではメスの方が拒食しがちな気がします。通販で購入した個体では、暗く低温な容器に長時間入れられたせいで、休眠モードになっているかもしれません。この個体がショップで、あるいは生まれてから今日まで、どのような光周期の下で育てられたのかが把握できれば、それに合わせた照明時間の調整で、拒食を回避できるかもしれません。


↑夜間、睡眠中の子供たち。飼育環境に慣れた個体は、シェルターに潜り込むこともなく無防備な状態でぐっすりと眠る。

 購入してきた幼体が餌を食べようとしないので、夜10時頃まで照明を点灯するようにしたことがあります。するとその個体は徐々に拒食が解消できました。その後、長期間かけて少しずつ照明時間を自然光に合わせてゆきました。ただ、この方法がよかったのか、たまたま飼育環境に馴化して食べるようになったのかは、多数の個体に対して実験を試みていないのでよくわかりません。

 拒食と光周期の関係について思いついたのは、あるベテランの飼育者が、フトアゴヒゲトカゲを冬場は冬眠させてしまうという話しを聞いたのがヒントになりました。つまり彼らは寒冷な時期を経験し休眠するような生態を有していることなのでしょう。日本のような冬が存在しない地方に棲むような生き物でも、休眠期がある種は少なくありません。ロイヤルパイソンというニシキヘビの仲間は、年間を通じ半年近く活発な活動を控え、採餌もしません。ただし休眠中でも日本の冬のような気候には耐えられず、加温してやらないとたちまち死に至ります。

 ロイヤルパイソンの場合は、加温していても冬期は休眠に至るケースが多いですが、フトアゴヒゲトカゲは加温していれば夏冬関係なく活発に活動し、よく食べます。フトアゴヒゲトカゲの拒食と光周期の関係については、もう少し詳しく調べる必要があると思います。

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