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拒食とコロニー

2013/08/29


 フトアゴヒゲトカゲの拒食の問題で、複数の個体を一緒に飼うと、まるで競争心が芽生えるように食べるようなるという事例がしばしばあります。前項で述べた光周期の調節よりも、複数飼育の方が拒食解消には効果的な場合が多いです。
 筆者の経験でも、光周期を調節してもホットスポットの温度を変えてもなかなか食欲がわかない個体に対して、複数飼育に変えると食欲旺盛になり健康が改善されたというケースが何件もありました。
 フトアゴヒゲトカゲは、幼体の頃から人間に馴れやすいトカゲです。人の手から餌をもらうようになるまでの馴化にそれほど時間を要しません。餌を皿に入れて置いてやっても見向きもしないのに、ピンセットでつまんでやると食べるということがしばしば見られます。この様子は、ピンセットという同胞が食べているのを見て、自分も食べたくなったといった風にも見受けられます。あまり食欲のない個体に対して、餌皿にピンセットを突っ込んでかき回していると、つられて駆け寄ってきて、ピンセットでつまんだ餌を横取りしようとする、そんな習性がこのトカゲには確かにあります。
 原産国のオーストラリアの野生個体がどのような暮らしを送っているのかを、筆者はほとんど知らないのですが、高度な社会生活は営まないまでも、ある程度のコロニー(集落)を作って暮らしているのではないかということが、飼育下での観察から推測できます。フトアゴヒゲトカゲはあきらかに単独で飼うよりも複数飼育に向いています。人に飼われている時間の長い成熟個体では、単独飼育でも良く食べよく肥えますが、幼体では数等を同じケージで飼う方が、良好な結果が得られます。


↑ フトアゴヒゲトカゲは複数飼育に向いているが、あまり個体差のあるもの同士の同居、あるいは成熟した複数のオスの同居は避けた方がよい。

 以前筆者は、原産国のちがう数種類のトゲオアガマ、チャクワラというイグアナ科のトカゲ、それにアオジタトカゲをも交えて、本種を飼っていました。フトアゴヒゲトカゲとアオジタトカゲの同居なんて絶対に不可能だと言われましたが、筆者のところでは長年仲良く暮らしていました。最初の数時間、フトアゴヒゲトカゲのオスは新入りのアオジタトカゲに対して激しい威嚇行動を繰り返しましたが、やがて無関心になり、その日のうちに同じ皿で一緒に採餌していました。


↑ 闖入者のアオジタトカゲに対して威嚇行動をとるオス。

↑体を傾けて横目で相手をにらみつけます。興奮状態では下顎の部分が真っ黒になります。


↑ 数時間後、和解が成立し、これ以降数年にわたって同居を続けました。


 まぁこれは特異な例で、常識的に考えると、フトアゴヒゲトカゲとアオジタトカゲはかなり食性にもちがいがあり、アオジタトカゲはより動物質を嗜好するようなので、フトアゴヒゲトカゲが小さかったりすると食べられてしまう恐れがあります。食べないまでも、ガブリと一撃を加えて殺してしまうか、重症を負わせることもあり得ます。長期間うまく同居していても、いつ事故が起こるか解りませんので、この同居の組み合わせはけっしてお勧めできません。
 フトアゴヒゲトカゲと問題なく同居できるのは、比較的温和なエジプトトゲオアガマやインドトゲオアガマ、チャクワラなどですかね。筆者はマリトゲオアガマ、サバクトゲオアガマ、クジャクトゲオアガマ、フィルビートゲオアガマなんかも同居させていましたが。あとシュナイダースキンクやヨロイトカゲの一種なども。熱帯魚の水槽じゃないんだからと、自分でも呆れますが、多種多様のトカゲの混合飼育の場合は、性格や個体のサイズ、入れる順番などを見極めないと調和が乱れます。また、ストレスで衰弱する個体も現れます。ケージをデカくすればそうした問題も解決できるのではと思われるかもしれませんが、ケージを広くすると、いじけた個体は餌場やホットスポットから遠ざかり半休眠状態になっちまいます。


↑ フトアゴヒゲトカゲの飼育下でのコロニー。インドトゲオアガマの顔も見える。

↑ 種類の異なるトゲオアガマたちと仲良く就寝するフトアゴヒゲトカゲ。


 現在は、フトアゴヒゲトカゲとエジプトトゲオアガマという混合で飼っています。もともと、エジプト君とフトアゴ君のメス2頭という環境にオスを導入したのですが、新入りのオスはさっそくエジプト君にけんかを売り、温厚なエジプト君は自分の半分くらいのサイズのフトアゴ君から逃げまどっていました。普通は新入りの方が萎縮するんですけどね。それも数時間で和解すると、1つの餌皿で一緒に採餌するようになりました。このフトアゴ君オスはたいへんに元気で威勢がよいので、ここに別のオスを入れることはまず不可能でしょう。
 サイズ差があまりにも大きいので同居を断念していたメスが、あるていど育ってからここへ入れたところ、最初の数日は同居をあきらめようかと思うほど新入りのメスがいじけてしまっていましたが、その後は積極的に輪の中に溶け込み、単独飼育の時に食が細くて手こずったのがウソだったように食欲旺盛になり、体つきもしっかりしてきました。
 フトアゴヒゲトカゲをコロニー状態で飼育する場合、失敗を回避するカギは2点です。群れの中にオスは1頭にとどめる。サイズに大きな差異がある個体同士は同居させない。この2点を守れば、本種の飼育は単独飼育よりも上手く行くはずです。群れの中に小さな個体がいても、基本的には食べられたりしないのですが、大きな個体が誤って噛みついて致命傷を負わせるようなことは少なくありません。彼らはなぜだか餌を取り合う習性があり、それがまたある種のコミュニケーションのようなのです。餌の奪い合いがケンカに発展することはありませんが、体格に大きな差があると小さな個体は噛みつかれて負傷する恐れがあります。また、群れの中にオスを導入する場合、メスはなるべく多い方が良いです。雌雄のペアといった飼育はお勧めできません。ショップの方はペア購入を勧めるかもしれませんが、中型以上のトカゲでペア飼育が上手く行くケースはあまりないと考えた方がよいです。これはヤモリやウズラ(鳥類)などにも言えることで、オスの性欲が1頭のメスに集中するとメスの負担が大きくなりすぎ、メスを衰弱させることにもなります。一夫多妻がもっとも理想的なのです。
 筆者は、フトアゴヒゲトカゲに関しては、ほとんど繁殖を考えていませんが、一夫多妻飼育は繁殖を狙うにも理想的です。筆者のところでもメスはしばしば産卵を経験しています。
 繁殖に挑戦される方は、メスの産卵用に高湿度の土を入れた産卵床を用意すると良いでしょう。と一口に申しても解らないでしょうから、仔細についてはネットで検索してみてください。筆者より経験豊かな飼育者が繁殖について仔細に記述されています。繁殖を望まない方は、何も用意する必要はありませんが、腹に卵を持ったメスは普段より水分の摂取が必要になります。通常は野菜の水分だけで充分ですが、繁殖シーズンすなわち春から秋にかけては、2〜3日に1回くらいはスプレーで飲み水を与えましょう。体内の水分が不足するとメスは卵詰まりを来し、それは死に直結します。


↑ 昼行性のトカゲたちは、高熱のスポットライトの下に集まり、こうして仲良く日光浴をする。かわいい。

↑ 日光浴はずっとしているわけではなく、充分に体が温まると涼しい場所に移動する。昼行性のトカゲの飼育では、暑い場所と涼しい場所の温度傾斜が必要不可欠になる。ゆえにある程度の広さがなければならない。

コメント
同居ケージの大きさってどのぐらいですか?
  • 筋肉
  • 2017/05/01 3:18 PM
筋肉様。
コメントありがとうございます。
現在はこのケージは使用していないのですが、幅120cm奥行き50cmていどのガラス温室です。温室の高さは2mくらいあるのですが、棚を入れてそのうちに一部を使用しています。
ですので、上述のトカゲたちの飼育スペースは、幅120cm×奥行き50cm×高さ50cmていどになります。
鑑賞魚用のガラス水槽に同程度の容量のものが市販されています。
ガラス水槽の場合はフタをバーベキュー網で応用するとよいです。網の部分に照明器具を設置できますし、網なので放熱効果もバッチリです。
蛍光灯タイプの照明はフタの上に置いた状態で網に針金等で固定し、スポットライトタイプのものは網にくくりつけてつり下げるとよいですね。
この程度のサイズのケージが利用できれば、ケージ内に暑いところと涼しいところを設けられるので理想的です。
  • 筆者
  • 2017/05/01 5:06 PM
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