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拒食と食性と飲み水

2013/08/31


 爬虫類の飼育において、拒食の問題はじつにやっかいです。フトアゴヒゲトカゲは比較的この問題を起こしにくいトカゲですが、それでも拒食スイッチが入ってしまうと、それをオフにするのはなかなか困難です。光周期の変更による寒冷期到来の錯覚、餌や飲み水を覚えない単独飼育の幼体、コロニーの中で他の個体との相性で拒食してしまうケース。前項で、フトアゴヒゲトカゲの拒食解消には複数飼育が良いと述べましたが、体のサイズに大きな差異がある者同士の同居や、複数のオスの同居では、複数飼育が逆効果になってしまうケースもあります。
 拒食を解決するには、彼らの食性についてもよく知る必要があります。ショップでは、野菜と人工フードで充分飼育できると教えてくれる場合が多く、中型のトカゲが野菜中心の雑食性であると認識している飼育者がじつに多いようですが、爬虫類は基本的に肉食です。野菜をもりもり食べるトカゲを見て、我々人間と同じように考えてしまうと彼らの健康を維持できません。現生のトカゲの中で完全植物食に移行しているのは大型化したスキンク類のオマキトカゲくらいじゃないでしょうか。このトカゲは植物質を分解するバクテリアに消化を助けてもらっており、そのバクテリアは親から子へ受け継がれます。
 爬虫類が植物質を摂取するのは、体の大型化という進化の過程のプロセスで生じるものと思われます。かつて中生代の超大型の陸棲動物は植物食に進化しましたが、それと同じように現生の爬虫類でも大型化と植物食の傾向は比例するようです。小型のトカゲやヤモリは虫を捕食する肉食性です。彼らは昆虫やミミズ等を捕食し、雨つゆを舐めて暮らしています。それが大型種に進化するにつれて食性に植物質を導入するようになるのです。植物は滋養と水分をまとめて摂取できて便利ですし、俊敏な虫を追い回す労を省けます。


↑ 活きたコオロギを食べる幼体。葉野菜をバリバリ食べるフトアゴヒゲトカゲも、幼体のうちは活き虫を摂らせる必要がある。


 大型種が植物質の食物を取り入れるようになるのは、どういった理由からなのでしょう。もしもゾウやキリンが肉食動物だったとしたら、餌として大量の動物が消費されることになり、狩られる側の動物は大きなダメージを受けるでしょう。あるいは増え過ぎた植物を刈り取るのに大型種は効果的な力を発揮します。生態系のネットワークを維持するのに、大型動物界でも小動物の世界でも、食性と生態系のバランスには深い関わり合いがあるようです。
 と言うことで、フトアゴヒゲトカゲくらいのサイズのトカゲになると、成長するに従い、植物質を摂取する割合が高くなり、ショップなどでは生き虫を用意しなくても、野菜と人工フードで飼育できるなどとピーアールするケースが多く、それは間違いではないのですが、基本的にはもともと肉食性つまり虫を食べる動物であるということを念頭に置いておく必要があります。

 餌皿の野菜や人工フードに見向きもしないような場合、生きたコオロギやジャンボミルワームなどを与えると、大喜びで追い回して食べることが少なくありません。これは幼体においても成体においても同じです。餌づけのきっかけを作るのに生き餌は効果的です。
 また幼体の発育や痩せている個体の健康回復にも生き餌は欠かせません。幼体を野菜と人工フードだけで育てるなんてあり得ないと考えてください。
 ただし、充分に成長した個体に対しては、過剰な生き餌の摂取は肥満の原因にもなります。野菜と人工フードだけで痩せてこないようなら、生き餌を与える必要はありません。また、ショップで購入した動物に、野原で取ってきた昆虫を与えるのもお勧めできません。寄生虫をもらってしまう可能性があるからです。と言いつつ、筆者もたまに採集した虫を与えたりして失敗したことはないのですが、飼育下という環境が飼育動物にとってひじょうに異質な環境であり、彼らがそれに馴らされているという事実も忘れてはいけません。野生暮らしではどうってことない寄生虫が飼育下では猛威を奮うってことは、多くの飼育者がしばしば経験することです。


↑ フトアゴヒゲトカゲが口を開けているのは、放熱のためだそうです。イヌと同じですね。

彼らはスポットライトの熱でたいへん高熱になった石の上などが大好きです。体が充分に温まると、こうして口を開けています。暑いなら涼しいところに行けばよいのに。ケージの中の温度の低いところでも口を開けているのは、ケージ全体が高温になりすぎていおり、体力の消耗やストレスを招き、危険な状態です。


 そして、忘れてはならないのが、飲み水の問題です。飼育動物の食性を把握することと同時に、水分補給の重要性も知っておかねばなりません。とくに本種のような乾燥地帯の動物は、野菜を食べるだけで水分補給が可能なうえ、水入れを用意してやってもそれを利用しなかったりします。長期間、野菜だけでも飼育は可能なので、つい水分補給の重要性を忘れがちになるのです。
 爬虫類に水を飲ませることは、思いのほか難しいものです。それを手っとり早く解決する方法は、霧吹きで顔に水をかけてやるというやり方です。これは多くのトカゲやヤモリの飼育にも応用できます。数日おきに霧吹きを実施してやると、水分不足の問題は解決できます。
 幼体の飼育や、痩せてきている個体、お腹に卵を持っているメスなどには、積極的に霧吹きをしましょう。ものぐさで週1くらいしか生き物の世話をしない筆者でも、霧吹きは週に2回は行ない、彼らの健康を管理しています。それに、水を舐める仕種がまたひじょうに可愛くて、見ていて飽きません。


↑ 成熟したオスの横顔。幼い頃は可愛かったのに、今は大した風格です。

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